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元刑務官が明かす死刑のすべて - 坂本 敏夫

死刑を直に経験した著者による、日本の極刑=死刑についての全貌を描いたノンフィクション。ノンフィクションとは言ったものの、一部フィクションを用いて語られています。この場合はフィクションと呼ぶのでしょうか?
本書では、写真などの実録で表現できない部分を、挿絵、漫画、小説形式を取ることで、できるだけあるがままの様子を伝えてくれようとしています。漫画はショッキングな内容ですが、これを描ききった漫画家の方には敬意を表します。また、小説部分は昨今の「警察内部告発もの」に似た印象を受けましたが、とても面白く読めました。
私は、凶悪事件の犯人という観点から、死刑囚について調べたことはありますが、本書のような、刑の執行する立場からの視点では当然ながら考えたことはありません。その時点での見解としては、単純に見せしめであること、(死ぬまで生かしておくような)終身刑だと経費の問題で難しいのではないかということ、のように考えていましたが、これを読んだ後の思いとしては、それもあるけどそんなに簡単でもないな、というのが感想です。あと、死刑廃止論者の視点での意見を知らないとフェアじゃないのかな、と感じました。
あとがきにある、著者が感銘を受けたというある論文の一節の言葉は、「錘り(おもり)」というキーワードで私の心に残りました。